
白高大神と中井シゲノさんについて知りたいのなら「神と人のはざまに生きる」という書籍が参考になると思います。著者はアンヌブッシィというフランスの人です。
2022年現在はすでに絶版となっており、入手は難しくなっていますが図書館で借りてもいいかもです。
神と人のはざまに生きるを読み込むことにより、白高大神の歴史や中井シゲノ自身の人生の詳細を知ることができます。
白高大神の歴史を知るためには「神と人のはざまに生きる」
「神と人のはざまに生きる」は明治・大正・昭和・平成という激動の時代を大都市である大阪の天王寺区に住み、生涯を神と人のはざまに立つ巫者、民間の祈祷者として生き抜いた女性、中井シゲノの物語です。
1,983年に当時「オダイ」と呼ばれた稲荷行者の中井シゲノさんと出会い、アンヌブッシィはすぐに中井シゲノさんに取材してみたいと思うようになったそうな。

中井シゲノさんは当時80歳を超えており、以降シゲノさんが1,991年に亡くなるまで丁寧に中井シゲノさんとの対話を重ねていく中、アンヌブッシィさんは日本人の精神の地下鉱脈(大和魂の真髄?)に触れるようになったそうです。

外国人でありながら、日本の民衆の心の琴線に触れるような深いところまで書かれていたり、そういう意味でも色々と珍しい本のようです。
外国人であるがゆえに、中井シゲノさんはアンヌブッシィさんと不思議な深い信頼関係を結ぶようになったそうです。
「神と人のはざまに生きる」の序文は「オダイの名が世界を駆ける」という文章から始まります。
オダイの名が世界を駆ける
本書を日本語で上梓することは私にとって大いなる喜びであり、深い感動を覚えずにはいられない。これは中井シゲノの一代記の「里帰り」であると言ってよいが、ここに至るまでには実に長い紆余曲折があった。
まず、この一代記は言うまでもなく中井シゲノという女性、母、宗教職能者が駆け抜けた長い人生の物語である。中井シゲノは困難な運命に敢然と立ち向かい続け、1930年代に村の暮らしを捨て、大阪という大都市に居を定め、そこで二十世紀のあらゆる激動に直面した。彼女の運命は前世紀に日本社会が体験した重大な激動の反映と結果であり、逆にこれらの変動を無視して彼女の運命を理解することはできないだろう。
そのため、わたし(アンヌブッシィ)は出来る限り中井シゲノの生の言葉をそのまま提示し、稲荷信仰と関係があろうとなかろうと、巫者、行者、修験者といった多くの宗教職能者がこの時代に辿らざるを得なかった道筋を日常風景の中に浮かび上がらせることに努めた。
つぎに、この研究が可能になった背景には、二十世紀になって、日本社会に対する分析方法、とりわけ人文社会科学の方法論に生じた変化がある。こうした発展を経て、日本民俗学、宗教民俗学、社会・文化人類学そして宗教学といった各分野の専門家たちは、民俗生活のあらゆる側面を視野に入れるようになった。具体的には、文字資料として全くもしくはほとんど書き残されていなかったもの、そしてそのなかで憑依、神がかり、託宣現象、守護神への信仰とその実践や修験道についての研究が目覚ましい展開を遂げたのだ。
しかも、こうした変化は、日本の研究者と組んで外国人の研究者も共同フィールドワークや学術的討論や意見交換に参加できる状況を生み出した。
日本生まれでもない私(アンヌブッシィ)が、一九七二年の来日後すぐに、最初期のひとりとして、日本民俗学、宗教民俗学の研究に関する大学教育の恩恵に何年間も浴することができたのはこうした状況のおかげである。
また、そのおかげで、わたしは以上の諸学問の大家たちの指導のもと、戦後の若い世代の登場とともに、各地の民俗生活や修験道の宝庫を明るみに出す一因となった熱のこもった学術的潮流に参加することができたのだ。
こうした文脈と、主として東北や沖縄の農村のーーシャーマンとも呼ばれるーー巫者、巫覡を扱う日本研究を背景としながら、わたしは中井シゲノの一代記を記述することで、依頼者や信者たちのぎりぎりの切迫した願いに日々応える仕事を営む彼女のような宗教職能者たちが、決して消滅間近の、日本の最果ての地だけに住む周縁的なマイノリティではないことを明らかにした。
実際、中井シゲノの一代記は、現代も数多くの巫者や行者、祈祷師が彼女のように大都市の中で暮らしており、現代社会に適応した宗教活動と日常生活とを貫く力学の中心に彼らが揺るぎなく位置していることの証言でもある。
「神と人のはざまに生きる」日本語版への序・・・より引用
中井シゲノの物語は単なる伝記ではない。
したがって、本書は日本で、また日本とフランスの間で私が長年歩んできた個人的学術的道程の結果でもある。この意味において、中井シゲノの物語は単なる伝記ではない。本書はもちろん私にとって自分の研究史における決定的な時期を画するものである。
けれども、それに先立つ日本での数々のフィールドワーク、各地の宗教民俗学や宗教職能者、修験道に関する論文の発表等々を経た上で、日の目を見ることになったものである。そして、本書はそれ自体が私の研究のさらなる展開の出発点となり、今も続く日本内外の研究者たちとの交流の出発点となってくれた
「神と人のはざまに生きる」日本語版への序・・・より引用
フランス語ではじめての研究結果
なお、この本にも歴史がある。本書は(シラタカのお告げ)のタイトルで、一九九二年に、フィリップ・ピキエというフランスの出版社から、この分野におけるフランス語でのはじめての研究成果として出版された。これは一九九三年にアレクサンドラ・ダヴィド・ネール賞を受賞したが、後に絶版になったため、二〇〇五年ミライユ大学出版社から再販された。
本書で扱った問題をより理論的に深めたいくつかの論文を発表してから、日本のほか、こうした研究が皆無であるフランス、あるいはアメリカ合衆国、イギリスなどで講演会、大学の講義、シンポジウムでの発表、本の紹介というかたちで何度も話をする機会に恵まれた。
「神と人のはざまに生きる」日本語版への序・・・より引用
翻訳が非常に大変だった。
最後に、翻訳自体も息の長い、根気のいる作業だった。フランスで出版してすぐに日本での出版を思い立った。だが、非常に難しい状況が重なり、ずっと前に翻訳を引き受けてくれていた安部哲三先生がひとまずの完成に辿り着いたのは二〇〇七年のことだった。ちょうどこの二〇〇七年の春、東京大学出版会の編集者と会って、出版のはなしがまとまった。
その間も、わたしが来日する機会をとらえて、なおフランスではとくに二〇〇七年の夏に、私と阿部先生は一緒に翻訳の検討を開始し、原文の意味に最も近づくように推敲を重ねた。その後私が学術用語を整理し、この修正作業を終えたのが、二〇〇七年末から二〇〇八年のはじめだった。
「神と人のはざまに生きる」日本語版への序・・・より引用
非常に多くの人々との出会いが出版を可能してくれた。
編集作業はそれから始まった。この長旅が深い印象を残す様々な出会いに彩られていたのは言うまでもない。中井シゲノとの出会いはそのひとつである。こうしたすべては、研究を進めていく過程で出会ったすべての人々ーー先生、学友、同僚、学生、友人、フィールドで出会った多くの方たちーーの理解、支持、援助(さらに、しばしば私の延々と続く質問に対する忍耐)なしにあり得なかった。この出会いはあまりに多く、ここで一人ひとりの名前を挙げることはできない。
だが、いつも寛大に私を迎えてくれた中井シゲノとその家族の方々、行者の皆さん、そして、稲荷信仰の調査プログラムの発起人だった今は亡き五来重先生に全幅の感謝を捧げておきたい。また、長年、ともに学術研究を行い、日本での出版の際大変協力してくれた島薗進先生と解説を引き受けてくれた鈴木正祟先生、非常に難しい状況に直面していたにも関わらず、質の高い翻訳を実現してくれた阿部哲三先生、和訳にあたってはいつも助けてくれる福島勲氏、厳密な編集作業をしてくれた宗司光治先生ならびに東京大学出版会の方々に心からの謝意を捧げたい。本書が以上の方々への私からの深い感謝の印として受け止めていただければ、まことに幸いである。そしてこの本を通して、読者がここに書かれている事実の豊かさと意味再発見し、更に自分自身でよりよく知るきっかけとなることを望みつつ筆をおく。
二〇〇八年六月九日 アンヌブッシィ
「神と人のはざまに生きる」日本語版への序・・・より引用
日本語版への序・・まとめ
出版にあたっては非常に大変だった。感動せざるを得ない。
この一代記は中井シゲノという長い人生の物語である。中井シゲノは日本の敗戦など様々な困難に直面して乗り越えてきた。
彼女の運命は日本社会が体験した重大な激動の反映と結果である。中井シゲノの物語は単なる伝記を超えている。
論文のような感じでフランス語でフランスで出版された。
フランスにて「シラタカのお告げ」というタイトルで、一九九二年にフランスにてフランス語で、民俗学における憑依・神がかり・託宣現象などの分野における初めての研究成果として出版された
フランスにて素晴らしい賞を受賞したものの、絶版となってしまったのですが二〇〇五年に再販されることに。日本のほかに、こうした研究が皆無であったフランスやアメリカ・イギリスなどでも本を紹介する機会に何度も恵まれた。
翻訳が大変だった。
翻訳が大変でした。フランスで出版してから日本での出版を思いついたが、非常に困難な状況が重なった。出版に至るまでの様々な出会いに感謝したい。
抜粋はここまで。
シゲノさんを取材したアンヌブッシィも凄い人物

- 中井シゲノを中心に巫女や行者・修験者といった人達の日常風景を書いた
- 憑依・神がかりなどの託宣現象を客観的に取材・研究して論文にした
- フランスでは初めての研究成果だったので、凄い賞を受賞したりした
アンヌブッシィは一九七七年に角川書店にて「捨身行者実利の修験道」という本を出版していたり。日本の修験道や神がかりなどに造詣が深い人物だったようです。
要するに、シンクロニシティです。偶然の一致ということだと思います。ピンと来たひとから図書館で借りてみたらいいと思います。
あとがきを読むと更に「超人」中井シゲノの概要がわかるかも・・・。

- 稲荷信仰のオダイにアンヌブッシィは会いたかった。
- オダイとの接触は簡単ではなかった
- 多くのオダイのなかで中井シゲノは頭抜けていた
- はじめて中井シゲノに会ったとき
- 中井シゲノの記憶は鮮明で素晴らしかった
- 中井シゲノの不安・・・「ほんとに本になるのでしょうか」
以下のリンク先にあとがきを抜粋してみました。中井シゲノとアンヌブッシィのストーリーは非常に興味深いものがあります。本編よりも興味深いかもしれません。
2022年より生まれ変わる白高大神
中井シゲノといえば白高大神。「超人」中井シゲノ亡き後は心霊スポットとして荒廃した状態が続きましたが有志の方々による清掃活動により生まれ変わりつつあります。